- 毎月の医療保険の支払いが高額で大変だ!
- 医療保険って本当に必要か?不要か?わからない。
- 自分に合った医療保険とは、どんなものだろうか?
民間の医療保険は60代以降も必要でしょうか?
必要であれば、どんな医療保険がいいのでしょうか?知りたいですよね。
私は55歳のときに老後の生活・お金に不安をいだきFPの勉強を開始。10年後の65歳でCFPと1級FP技能士の資格を取得しました。
FP(ファイナンシャル・プランナー)がシニア世代のみなさんへ医療保険をどうすべきか?問題解決のお手伝いをします。
この記事を読めば、「あなたに医療保険が必要か不要か、必要であればどんな医療保険がいいのか」がすべてわかります。
貯蓄で医療費だけに使える余裕資金が100万円程度あれば、特に医療保険は必要ありません。
ただし、余裕資金がない人や何らかの健康不安がある人は、自分にあった医療保険が必要でしょう。
老後の不安をなくし医療保険をどうすべきか?と、お考えの方は最後まで読んでください。
60代以降、民間の医療保険は必要か?不要か?
高額療養費制度で医療費の負担軽減
日本は公的医療保険が充実しており、年齢や収入により医療費の自己負担額は1〜3割負担です。
健康保険証の提示で病院などの窓口で支払う自己負担額は、原則的には70歳未満であれば3割負担。
70歳以上75歳未満であれば2割負担、75歳以上の後期高齢者医療制度では1割負担です。
しかし、病気やケガ、そして入院・手術で支払いが数十万円、数百万円ほどかかったら大変です。
こうした高額な医療費がかかったときでも上限を設けて負担してくれるのが高額療養費制度。
高額療養費制度では、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
【事例問題】
60歳で年収が400万円の人が、ある年の同一月内(例:4/1〜4/30)の30日間入院し、総医療費が100万円かかった場合、自己負担限度額はいくらでしょうか?
【回答】
60歳であれば医療費は3割負担ですので、病院の窓口で100万円の3割、つまり30万円を支払います。
[自己負担限度額を求める計算式]
80,100円+⦅1,000,000円(総医療費)-267,000円⦆×1%=87,430円
高額療養費の自己負担限度額は87,430円です。
高額療養費の手続きをした場合、窓口で30万円負担していますので、212,570円(300,000円-87,430円)があとで払い戻されます。
高額療養費制度はシニア世代にとって、医療費の負担を軽減する思いやりのある制度です。
平均的な入院日数や入院・手術の総費用はどれくらい?
厚生労働省(令和2年)の調査によると、入院日数の平均は32.3日。
年齢別の平均入院日数は、35歳~64歳:24.4日、65歳以上:40.3日、70歳以上:41.7日、75歳以上:45.0日です。
年齢の増加に伴って、入院日数が増える傾向にあります。
病床の種類別にみる14日以下の入院は、病院で入院全体の66.8%、一般診療所では81.4%で多数をしめている状況。
傷病により65歳以上で「統合失調症など」は1,000日超え、「アルツハイマー病」が270日を超える長期の入院となっています。
生命保険文化センター(2022年度)の調査によると、入院時の自己負担費用の平均は約198,000円で、1日あたりの自己負担費用の平均は20,700円となっています。
自己負担費用には治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含みます。
出典:リスクに備えるための生活設計丨ひと目でわかる生活設計情報丨(公財)生命保険文化センター
以上の調査結果から入院日数が思ったより長く、自己負担費用も高額となり大変だと思われた方も多いでしょう。
ですが、この数字は特定の傷病で長期間の入院や高額の治療費の分も含まれており、全体への影響が大きいと思われます。
特定の傷病(統合失調症やアルツハイマー病など)を除いた場合の平均入院日数は32.3日より、ぐっと短くなるでしょう。
調査には自己負担費用で高額療養費制度を利用してない人も含まれており、高額療養費制度を全部の人が使ったと仮定すれば、自己負担費用は大幅に安くなると判断されます。
医療保険が必要でない人
60歳で年収が400万円の人が1か月間入院し、総医療費が100万円かかった場合、
高額療養費の手続き後、自己負担額はざっくりと計算して約9万円でしたよね。
医療費の自己負担額は約9万円ですが、保険適用外に別途経費が必要。
食事の自己負担額は1食460円。1か月間で約4万円が必要です。
その他、テレビを視聴するテレビカード代、洗濯代、日用品代などの諸経費が1か月間で数万円かかります。
大部屋での入院がいやであれば、少人数・個室を利用すると差額ベッド代が必要です。
差額ベッド代がかからない大部屋に入院した場合、経費は1か月間で約17万円で済みます。
計算式:約9万円(医療費の自己負担額)+約4万円(食事代)+約4万円(諸経費で日額1,300円使用の場合)=約17万円(入院・手術費などの合計額)
このほか、少人数部屋・個室などを希望の場合には差額ベッド代が発生します。
差額ベッド代の料金は1日数千円から数万円まで千差万別。
1日8千円の部屋を利用した場合、1か月で約25万円かかります。
差額ベッド代(例:1日8千円の利用)を含めた場合、
1か月間で負担する総費用は約42万円⦅約17万円(入院・手術費などの合計額)+約25万円(差額ベッド代)⦆です。
貯蓄で医療費だけに使える余裕資金が100万円程度あれば、
大部屋に入院した場合、1か月約17万円の予算で5か月間入院できます。
差額ベッド代が必要な個室などに入院した場合、1か月約42万円の予算で2か月間入院可能です。
高額療養費制度は自己負担限度額を超えた金額が3か月後ぐらいに払い戻される制度ですが、
限度額適用認定証があれば、病院の窓口での支払いが、最初から自己負担限度額となり、高額な医療費を準備する必要はありません。
貯蓄で医療費だけに使える余裕資金が100万円程度あれば、民間の医療保険は特に必要ありません。
医療保険が必要な人
- 急に高額な医療費の出費に対応できない。(貯蓄で医療費だけに使える余裕資金100万円程度がない)
- 健康不安や持病を持っている。
- ガン、心疾患、脳疾患など三大疾病による長期入院に備えたい。
- 公的保険制度で対応できない医療(先進医療など)を準備したい。
- 医療保険に入っていないと日常的に不安な気分になる。
以上の方は、自分に合った医療保険が必要です。
シニアFPが伝えたいリスクと保険
リスクと保険
保険は公的保険と民間保険に大きく区分され、民間保険は生命保険と損害保険に分類されます。
生命保険は第一分野で、損害保険は第二の分野の保険。
医療保険はどちらか一方に分類しにくい分野ですので、第三分野の保険と呼ばれています。
第三分野の保険には、医療保険、ガン保険、障害保険、介護保険、所得補償保険などがあります。
リスクに対しては準備が必要。自動車を運転中、人身事故を起こし加害者となった場合、自分の貯蓄だけでは対応できない場合が多いですよね。
自動車に対しては自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)が強制的に義務づけられています。
それでも保障が充分でないので任意保険の自動車保険に、ほとんどの人が加入しているのが現状です。
最近では自転車事故でも高額な賠償事例が発生しており、自転車保険を義務化している自治体も増えています。
災害に対して火災保険や地震保険も大きなリスクに備えるため必要ですね。
各種事故や災害に対しては貯蓄だけでは対応できないので、リスクに見合った保険を準備することが必要。
リスク許容度は人によって違い、許容範囲内であれば保険は不要。
医療保険は全員が絶対に必要なものではありません。
しかし、上記「医療保険が必要な人」に該当する方は、自分に見合った医療保険に加入することをお勧めします。
老後の医療保険を選ぶ考慮事項
- 医療保険には定期型と終身型がある。定期型は更新のたびに保険料が上がり、保障期間が終了するとその後の保障はなくなる。老後は生涯保険料が一定で保障が継続される終身型が安心です。
- 高齢になって新たに医療保険に加入すると保険料は高くなるので、若い時から加入している医療保険があれば、それを基本に見直す。
- 医療保険の保険料が高額で負担が大きいときは、不要な特約をなくし必要な特約(保障)のみにスリム化する。
- ガン、心疾患、脳疾患など三大疾病に備えたい方は、三大疾病の条件に合致したときに50万円以上の一時金が出るプランや長期間の入院給付金が出る保険商品を選ぶ。
- 三大疾病に該当した場合に保険料払込が免除になる「三大疾病保険料払い込み免除特約」をつけるのもお勧めです。ただし、特約保険料が高額になることが多いので確認が必要。
- 医療保険でガンへも備えたい場合、ガン特約を付ける。
- 特にガンへの対応を重視したければ、医療保険ではなくガン保険を選ぶ。
- 先進医療を備えたいのであれば、医療保険に先進医療特約を付ける。(特約保険料は保険会社によって違いますが、月に数百円程度です)
以上、老後の医療保険を選ぶ考慮事項を述べましたが、自分に見合った医療保険を選ぶことが大切です。
毎月の保険料の支払いが高額となり家計を圧迫するようでは、安定した生活を送れません。
年金生活者になれば収入も限られ、保険の内容・金額を吟味しないと、残された長い老後を安心して過ごせません。
保険は必要最小限の保障・金額で生涯利用できるものを選びましょう。
まとめ
公的医療保険制度、特に高額療養費制度、医療保険の役割、医療保険が必要でない人、医療保険が必要な人、老後の医療保険を選ぶ考慮事項についてご理解いただけたと思います。
医療保険のポイントは、
- まず、自分に医療保険が必要か、不要か判断する。
- 公的保険のリスク許容度を超えている部分を民間の医療保険で補填する。
- リスクを過大評価して、不要な特約をつけて保険料を高額にしない。
- 自分に見合った保険商品を選び、必要最小限の保険料に設定する。
- 老後は生涯保障の終身保険が安心。
- 脳疾患などによる長期入院に備えたい人は、1入院日数120日以上、通算支払限度日数1,000日以上の長期間の入院保障のものを選ぶ。
- ガン、三大疾病に特に備えたい人は医療保険ではなく、ガンや三大疾病に特化した保険を選ぶ。
などです。
老後生活は限りある収入しかなく、急な医療費の出費は経済的に大きな負担となります。
高齢になると病気やケガで病院通いが多くなります。老後は、ある程度まとまった医療費の準備が必要です。
医療保険を待たない人は突然発生する医療費の出費を想定し、医療費専用(別サイフ)の貯蓄で備えましょう。
医療保険を準備される人は、老後の医療を保障する自分に見合った保険商品を選びましょう。
医療保険が必要な方、不要な方、ともに老後医療のリスクと適切に向き合い、不安のないハッピーな老後を送りましょう!