- 最近、がん保険のCMをよく目にするが………。
- 「医療保険」と「がん保険」の違いは?
- がん保険が必要か、不要なのかよくわからない?
- 必要だったら、どんながん保険がいいのかな?
高齢になれば、がんになりやすいとよく耳にします。
しかし、高齢になれば、保険料が高くなり、がん保険に入るかどうか迷います。
必要であれば、どんながん保険がいいのか知りたいですよね。
私は55歳のときに老後の生活・お金に不安をいだきFPの勉強を開始。10年後の65歳でCFP(日本FP協会認定)と1級FP技能士の資格を取得しました。
FP(ファイナンシャル・プランナー)がシニア世代のみなさんへ、がん保険をどうすべきか?問題解決のお手伝いをします。
この記事を読めば、「あなたにがん保険が必要か不要か、必要であればどんながん保険が良いのか」がすべてわかります。
貯蓄で医療費だけに使える余裕資金が100万円程度あり、保険適用外の先進医療が不要とお考えの方は、がん保険は必要ありません。
ただし、余裕資金がない、先進医療を備えたい、がんへの強い不安がある方は、自分にあったがん保険が必要でしょう。
老後の不安をなくし、がん保険をどうすべきかと、お考えの方は最後まで読んでください。
がん保険の基礎知識
がんの概要
がんとは?
がんとは、正常な細胞の遺伝子が傷ついてできた異常な細胞が、無秩序に増え続けて発生する病気です。
がんは、心疾患、脳血管疾患とならび、日本人の死因の上位を占める三大疾病のひとつ。
がんが発生した細胞の種類によって、固定がんと血液がんの2つに分類されます。
固定がんは、体の表面や消化器および気道などの内側、臓器などを覆う上皮細胞に発生する癌腫(がんしゅ)と上皮細胞以外に発生する肉腫の2つに分類されます。
血液がんは、血管や骨髄(こつずい)、リンパ節の中にある細胞(白血球など)に発生するがんです。
がんの罹患率(りかんりつ)
がんの罹患率とは、ある集団で新たに診断されたがんの数を、その集団のその期間の人口で割った値です。通常1年単位で算出され、人口10万人のうち何例罹患したかで表現されます。
国立がん研究センターがん情報サービスがん統計の2019年のデータによると、
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、
男性65.5%(2人に1人)
女性51.2%(2人に1人)
生まれたばかりの男児が60年後の60歳までにがんになる確率は7.7%、生まれたばかりの女児が60年後の60歳までにがんになる確率は12.5%です。
生涯を通しては男性の方ががんになる確率は高いのですが、若い時には女性の方ががんになりやすい傾向にあります。
現在、60歳男性が10年後の70歳までにがんになる確率は15.7%、20年後の80歳までで40.5%、生涯を通して66.1%です。
現在、60歳女性が10年後の70歳までにがんになる確率は10.4%、20年後の80歳までで24.3%、生涯を通して45.2%になります。
以上のデータでお解りのようにがんは若い年代での発生率は低く、高齢になるにつれて増加し、80歳以降でピークとなります。
出典:最新がん統計 | 国立がん研究センター
2019年累積罹患リスク | 最新がん統計 | 国立がん研究センター
がんの死亡率
国立がん研究センターがん情報サービスがん統計の2021年のデータによると、
日本人が、がんで生涯を通して死亡する確率は、
男性26.2%(4人に1人)
女性17.7%(6人に1人)
生まれたばかりの男児が60年後の60歳までにがんで死亡する確率は1.6%、生まれたばかりの女児が60年後の60歳までにがんで死亡する確率は1.7%です。
現在、60歳男性が10年後の70歳までにがんで死亡する確率は4.0%、20年後の80歳までで12.7%、生涯を通して26.4%です。
現在、60歳女性が10年後の70歳までにがんで死亡する確率は2.3%、20年後の80歳までで6.6%、生涯を通して16.7%になります。
以上のデータでお解りのようにがんは若い年代での死亡率は低く、10%を超えるのは80歳以降となるのです。
出典:最新がん統計 | 国立がん研究センター
2021年累積死亡リスク | がん情報サービスがん統計 | 国立がん研究センター
がんの入院と治療費
がんの入院日数
がんでの平均入院日数は、がんの種類や治療方法によって大きく異なりますが、2020年(令和2年)のデータでは平均約19. 6日です。
しかし、これは全年齢における平均値で、働き盛りの35〜64歳の例で見ると約14. 7日と比較的短期間となります。
胃がんでの平均入院日数を例にとると、1996年(平成8年)のデータでは47.1日だったのが、2020年(令和2年)には22.3日と大幅に減少しています。
理由は医療技術の進歩、それとがんの治療方法が、入院を中心とする治療方法から、通院を中心とする治療方法に変わってきているためです。
抗がん剤や放射線治療などは通院治療で行われることが多く、通院以外は日常生活を送ることができます。
がんの治療費
がんの治療費は、がんの種類や進行度によって大きく異なります。
一般的には、入院費や手術、抗がん剤などの医療費に加えて、通院や入院時の交通費や食費などもかかります。
「厚生労働省の2018年(平成30年)医療給付実態調査の統計表第3表EXCEL」のデータをもとに計算すると入院によるがん治療の場合、平均で約76.5万円、自己負担3割で約22.9万円です。
外来によるがん治療の場合、平均約5.6万円、自己負担3割で約1.7万円かかります。
出典:医療給付実態調査 報告書 平成30年度 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
厚生労働省の医療給付実態調査は、医療費の動向を迅速に把握するため、医療機関からの診療報酬(レセプト)に基づいて、医療保険・公的負担分の医療費を集計したもので、高額療養費制度の適用前の金額を反映しています。
がんでの入院の平均的な治療費約76.5万円も高額療養費制度を利用すれば自己負担限度額までとなり、同一月内の入院であれば、ざっくり計算で約9万円程度となります。
がん保険の概要
がん保険とは?
がん保険とは、その名のとおり保障対象をがんに限定した保険で、がんと診断されたときに、がん給付金、入院給付金、通院給付金などが支払われます。
新しいがん保険では、外来で抗がん剤治療や放射線治療などを受けた場合も給付金を支払うタイプが主流となっています。
がん保険の分類
がん保険は、保障期間によって定期型と終身型の2つに分類されます。
定期型は、一定の期間内だけがん保険の保障を受けられるタイプです。期間が決まっている分、終身型よりも保険料が安くなります。
終身型は、一生涯ずっとがん保険の保障を受けられるタイプです。期間が無制限な分、定期型よりも保険料が高いです。
定期型は更新ごとに保険料がアップされ、病状によっては更新できない場合もあります。
終身型は、定期型よりも保険料がやや高くなりますが、生涯の保障が確保でき安心して治療に望むことができます。
先進医療の概要
がんの先進医療
がんの先進医療とは、厚生労働省が認めた高度な医療技術のことで、がんや難病に対する新しい治療法や手術、検査などが含まれます。
先進医療は、公的医療保険の対象にするかどうか検討している段階なので、技術料は全額自己負担になります。
先進医療は、先進医療Aと先進医療Bの2種類です。
先進医療Aは、保険診療と併用できる先進医療で、先進医療Bは、保険診療と併用できない先進医療です。
先進医療に含まれる内容は時間の経過とともに変更になる可能性があります。現在どのような医療技術が先進医療に含まれているかは、厚生労働省のウェブサイトで確認することができます。
また、先進医療を受けられる医療機関や受診方法についても、事前に確認する必要があります。
「厚生労働省の2023年(令和5年)現在の先進医療実施機関の一覧」によると、国内で陽子線治療を行っているのは19か所、重粒子線治療を行っているのは7か所の医療機関です。
「厚生労働省の2020年(令和2年)の先進医療Aに係る費用」によると、陽子線治療は年間で約1,200件、重粒子線治療は年間で約700件実施されています。
保険適用外の先進医療の1件あたりの費用は、陽子線治療で約270万円程度、重粒子線治療で約310万円程度かかります。
出典:令和2年6月30日時点における先進医療Aに係る費用 | 厚生労働省
先進医療特約
がんの先進医療特約の保険料は、保険会社や商品によって異なりますが、一般的には月に数百円程度です。
先進医療特約を付加することで、高額な先進医療の技術料をカバーすることができます。
ただし、先進医療特約には通算の上限額や 保障範囲が定められているため、契約する前に確認しておく必要があります。
先進医療の実状
先進医療とは、有効性や安全性は確認されているが、公的医療保険の対象ではない治療方法のことです。
がん治療における代表的な先進医療には「陽子線治療」や「重粒子線治療」があります。
先進医療を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 先進医療を実施している医療機関で治療を受けること
- 医師から先進医療が必要だと判断されること
- 先進医療にかかる費用を全額自己負担すること
先進医療を実施している医療機関は限られており、2023年5月現在、陽子線治療を受けられる医療機関は国内で19か所、重粒子線治療を受けられる医療機関は7か所と少なかったですよね。
がん保険に加入していても、先進医療特約を付けていない場合は、先進医療にかかる費用は保障されません。
先進医療特約を付けていても、保障内容や限度額によっては十分な給付が受けられない場合もあります。
先進医療を実施している医療機関の数が少なく、治療条件も限定されています。先進医療を利用しようとしても、地理的・金銭的な問題を含め利用が困難な場合も多いようです。
先進医療の治療費に何百万円もかかるのに、先進医療特約は月に数百円程度の安さで設定されています。
厚生労働省の2020年(令和2年)の患者調査の概況によると、医療機関でがん治療を受けている人のうち入院が11.3万人、外来が18.2万人です。
入院・外来の合計で年間約30万人ががんで治療を受けていますが、先進医療が行われているのは年間2,000件程度と、ごく一部の人に限られています。
利用が少ないのは、「先進医療が利用できない都道府県があることや、先進医療特約の保険金が実損払いが多い」ことが原因だと考えられます。
先進医療を受けたい場合は、事前に自分のがん保険の内容を確認し、必要であれば見直しや追加加入を検討することが大切です。
出典:先進医療を実施している医療機関の一覧|厚生労働省
2020年(令和2年)患者調査の概況 | 厚生労働省
がん保険と公的保険
がん保険と公的保険との関係
がん保険は、がんになったときに一定の金額を受け取ることができる民間の保険です。公的保険とは別に加入する必要があります。
公的保険は、国民皆保険制度に基づく医療保険で、医療費の一部を自己負担し、残りを公的保険から支払われます。また、高額療養費制度や傷病手当金などの制度もあります。
がん保険と公的保険は、それぞれ異なる目的や内容で補償されます。がん保険は、がんによる生活や仕事への影響を考慮した金額を給付します。
公的保険は、医療費の負担を軽減することを主な目的とします。
がん保険と公的保険は、併用することができます。がんになった場合、公的保険でカバーされない費用やサービスについては、がん保険から給付を受けることができます。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、後から払い戻される制度です。
高額療養費制度を利用するには、医療機関や薬局で支払った領収書や診断書などを添えて、加入している保険機関の全国健康保険協会か健康保険組合に申請する必要があります。
日本は公的医療保険が充実しており、年齢や収入により医療費の自己負担額は1〜3割負担です。
健康保険証の提示で病院などの窓口で支払う自己負担額は、原則的には70歳未満であれば3割負担。
70歳以上75歳未満であれば2割負担、75歳以上の後期高齢者医療制度では1割負担ですよね。
しかし、病気やケガ、そして入院・手術で支払いが数十万円、数百万円ほどかかったら大変ですね。
こうした高額な医療費がかかったときでも上限を設けて負担してくれるのが高額療養費制度です。
高額療養費制度は、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が、あとで払い戻される制度なのです。
例えば、サラリーマンのAさん(60歳で年収が400万円)が、ある年の4月1日〜4月30日まで、胃がんで入院・手術をして、総医療費が100万円(全額が保険適応)かかった場合、窓口での支払額は3割負担の30万円です。
高額療養費制度では、年齢と収入により自己負担限度額が定められており、Aさんの自己負担限度額は、ざっくりとした計算で約9万円となります。
高額療養費の手続きをした場合、30万円から自己負担限度額約9万円を超えた約21万円があとから払い戻されます。
つまり、医療費の支払いは実質、約9万円で済むわけです。
傷病手当金
傷病手当金とは、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される制度です。
傷病手当金を受けるには、次の条件を満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やけがであること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けないこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
傷病手当金の計算式
1日あたりの傷病手当金=直近12か月の標準報酬月額を平均した金額÷30×2/3
傷病手当金の支給額=1日あたりの傷病手当金×休業日数(※)
(※) 休業日数には待期(3日間)完了後からの休業日数(土日を含む)を指定、支給期間は最長で1年6か月間です。
ただし、障害厚生年金や労災保険などとの関係で、支給が停止されたり調整されたりする場合があります。
傷病手当金は、国民健康保険の自営業者やフリーランスには通常、支給されません。
がん保険と介護保険の関係
がん保険と介護保険は、それぞれ異なる目的で加入するものですが、両方ともがんの患者さんの生活を支える役割があります。
がん保険は、がんの治療費や生活費などに自由に使える現金を受け取ることができます。
介護保険は、在宅療養や施設入所などの介護サービスを利用する際に、自己負担額を軽減することができます。
ただし、介護保険を利用するには、要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定は、日常生活動作(ADL)や認知機能などを基準に判定されます。
しかし、がんの患者さんは、症状が進行しても歩くことができたり、自分で座っていられたりする人もいるため、そのまま申請すると要支援1~要介護1と低く判定されることがあるのです。
そこで重要なのが、主治医意見書です。主治医意見書は、介護保険申請書に添付して提出する書類で、主治医が記載します。
この内容次第で、介護保険で受けられるサービスが大きく変わります。
主治医意見書には「診断名」の欄があり、ここに「進行性かつ治癒困難な状態にある悪性新生物(がん)」という趣旨を記入してもらうことが大切です。
また、「症状としての安定性」を記入する欄で、「不安定」を選んでもらえれば、早い段階から介護用品をレンタルしやすくなります。
要介護認定を受けるためには、主治医意見書の「診断名」や「症状としての安定性」、「疾病の経過や投薬内容」などで、介護認定の必要性を具体的に記入してもらうことが大切です。
がん保険と医療保険の違い
保 険 区 分 | が ん 保 険 | 医 療 保 険 |
保障の対象 | がんに関する保障に限定 | がんを含めた病気やケガ全般を保障 |
保障の内容 | ・がん入院給付金 ・がん手術給付金 ・がん通院給付金 ・がん診断給付金(一時金) ・がん先進医療特約 入院日数に制限がない | ・入院給付金 ・手術給付金 ・通院給付金 保険(特約)によっては、放射線治療や化学療法も補償となる。 入院や手術の保障がメインで、一般的に入院日数に制限がある。 一般的に先進医療特約をつけていないと先進医療給付金は受け取れない。 |
保障の開始時期 | 保障は3か月または90日経過してから開始される場合が多い。 これは免責期間と呼ばれるもので、この期間にがんと診断されても保障の対象にならない。 | 保障は契約手続きが完了した日から開始される。 |
がん保険と医療保険のどちらに加入するかは、個人のニーズや予算によって異なります。
がんに対する保障を重視する場合は、がん保険を検討するとよいでしょう。
病気やケガ全般に対する保障を重視する場合は、医療保険を検討するとよいでしょうね。
また、両方のメリットを享受したい場合は、両方の保険を選択する必要があります。
60代以降でがん保険は必要か?
がん保険が必要でない人
(事例)60歳で年収が400万円のAさんが、大腸がんで20日間(同一月内)入院・手術した場合の必要費用
Aさんは高額療養費の手続き後、自己負担限度額はざっくりと計算して約9万円です。
医療費の自己負担限度額は約9万円ですが、保険適用外に別途経費が必要ですよね。
食事の自己負担額は原則1食460円。20日間で約2.8万円が必要となります。
その他、テレビを視聴するテレビカード代、洗濯代、日用品代などの諸経費を日に1,500円使用した場合、20日間で約3万円かかります。
大部屋での入院がいやであれば、少人数・個室を利用すると差額ベッド代が必要です。
差額ベッド代がかからない大部屋に入院した場合、経費は1か月間で約14.8万円で済みます。
計算式
約9万円(医療費の自己負担限度額)+約2.8万円(食事代)+約3万円(諸経費)=約14.8万円(医療費、食事代、諸経費の合計額)
このほか、少人数部屋・個室などを希望の場合には差額ベッド代が発生します。
差額ベッド代の料金は1日数千円から数万円まで千差万別です。
1日8千円の部屋を利用した場合、20日間で約16万円かかります。
計算式【差額ベッド代(例:1日8千円の利用)の場合】
約14.8万円(医療費、食事代、諸経費の合計額)+約16万円(差額ベッド代)=約30.8万円(20日間で必要な総合計額)
100万円程度あれば、通常のがんで入院・手術をしても、食費、差額ベッド代、諸経費を含め十分対応可能です。
貯蓄で医療費だけに使える余裕資金が100万円程度あり、利用制約のある先進医療が不要の方は、がん保険は必要ありません。
がん保険が必要な人
がん保険が必要な人は、
- 医療費だけに使える余裕資金が100万円程度ない。
- がんに強い不安がある。
- がん家系である。
- がん先進医療の準備をしたい。
以上に該当する方は、自分のニーズに対応したがん保険が必要でしょう。
がん治療とがん保険
がんの三大治療(標準治療)
外科療法(手術)
がんの外科療法(手術)とは、がんやがんのある臓器を切り取ることで治療を行う方法です。
がんの三大治療法の一つで、早期のがんに対しては最も根治が期待できます。
手術の種類や方法は、がんの種類や進行度、体の状態などによって異なります。
一般的には、がんだけではなく、周囲の組織やリンパ節も一緒に切除します。
手術には、開腹手術や開胸手術などの直接目で見て切除する方法と、腹腔鏡や胸腔鏡などのカメラを使って切除する方法があります。
また、手術前後や手術中に、化学療法や放射線療法などを併用することもあります。 これを集学的治療といいます。
手術のメリットは、完全に切除できれば体内からがんを消すことができることです。
一方で、手術のデメリットは、体にメスを入れるため傷や体力の回復に時間がかかることや、切除する部位によっては臓器や体の機能が失われることがある点です。
手術を受ける場合は、担当医師から手術の目的や方法、リスクや合併症、術後の経過観察などについて詳しく説明を受けましょう。
放射線療法
がんの放射線療法とは、人工的に作り出した放射線をがん細胞にあてることによって、がん細胞内の遺伝子(DNA)にダメージを与え、がん細胞を死滅させる治療法です。
がんの三大治療法の一つで、手術や薬物療法と併用されることもあります。
放射線療法は、体の外から放射線をあてる外部照射と、体の内側から放射線をあてる内部照射に分けられます。
外部照射では、X線、電子線、陽子線、重粒子線などの種類や装置によって治療方法が異なります。
内部照射では、放射性物質を体内に挿入したり、飲み薬や注射で投与したりします。
放射線療法は、通院治療が一般的で、治療期間中は定期的に診察を受けます。
放射線は正常組織にも影響を与えるため、副作用が起こる可能性があります。
副作用は、治療内容や部位によって異なりますが、一般的なものとしては、食欲不振、脱毛、下痢、皮膚の赤みやかゆみなどです。
副作用は治療終了後に徐々に改善されることが多いですが、場合によっては長期間残ることもあります。
化学療法(抗がん剤など)
がんの化学療法とは、抗がん剤を用いてがんを治療することです。
抗がん剤には、がん細胞の増殖を抑えたり、再発や転移を防いだりする効果があります。
手術治療や放射線治療が、がんに対する直接的・局所的な治療であるのに対し、化学療法では、より広い範囲に治療の効果が及ぶことが期待できます。
化学療法は、抗がん剤治療を単独で行う場合と、手術や放射線治療などの他の治療と抗がん剤治療を組み合わせて行う場合(集学的治療)があります。
また、化学療法には、一種類の薬剤だけを使う場合と、いくつかの種類の薬剤を組み合わせて治療する場合があるのです。
薬の種類によって飲み薬として、または点滴や注射で行います。
化学療法には、治癒を目指す場合と、延命や症状緩和を目指す場合があります。
治癒を目指す場合は、手術前や手術後に化学療法を行うことで、再発リスクを低くしたり、手術しやすい状態にしたりします。
延命や症状緩和を目指す場合は、がんが進行していた場合や手術後に再発した場合などに化学療法を行うことで、がんの進行を遅らせたり、身体的な苦しみを和らげたりします。
先進医療でのがん治療
陽子線治療
がんの陽子線治療とは、陽子という水素の原子核を高速で加速させて、がんの病巣にピンポイントで照射する治療法です。
陽子線は、X線などの一般的な放射線と違って、体内で止まる深さをコントロールできるため、がんに集中して放射線を当てることができます。
その結果、がん細胞にダメージを与えつつ、周囲の正常な組織への影響を最小限に抑えることができます。
陽子線治療は、手術や化学療法などの他の治療と組み合わせて行うこともあります。
陽子線治療の対象となるがんは脳腫瘍(のうしゅよう)、頭頸部腫瘍(とうけいぶしゅよう)、肺がん、食道がん、肝細胞がん、小児がんなどです。
陽子線治療は一部疾患についての治療は保険適用ですが、それ以外の大部分は先進医療となり保険適応外となります。
重粒子線治療
がんの重粒子線治療とは、炭素イオンという重い粒子を光速の約70%に加速して、がん細胞に照射する放射線治療の一種です。
重粒子線は、がん病巣に高線量を集中させるとともに、がん細胞のDNAを傷つけて増殖を阻止する生物効果が高いため、体内深部のがんや従来の治療に抵抗性のある難治がんにも効果が期待できます。
重粒子線治療は、日本を中心に基礎研究および臨床研究が進められている治療法です。
重粒子線治療の対象となるがんには頭頚部がん、肺がん、肝がん、膵がん、子宮がん、直腸がん、前立腺がん、骨軟部腫瘍、眼球腫瘍、涙腺がん、食道がんなどがあります。
重粒子線治療は一部疾患についての治療は保険適用ですが、それ以外の大部分は先進医療となり保険適応外となります。
がん保険のメリット・デメリット
メリット
がん保険のメリットは、がんと診断されるとさまざまなタイミングで給付金が受け取れることです。
診断給付金、入院給付金、手術給付金、通院給付金などがあり、治療に必要な医療費や生活費の補填に役立ちます。
また、抗がん剤や放射線治療などの三大治療や先進医療などに備える給付金や特約があり、一般的な医療保険と比較してさらに手厚くがんに備えることができます。
がんの治療は部位やステージによって、手術・入院が必要なものや通院だけで治療するものなど様々なケースがあります。
治療が長期間におよぶものもありますが、がん保険は保障期間に制限がないものが一般的なので長期間の治療にも安心です。
病状によっては休職や退職することもあり、収入が大きく減少する可能性があります。
がん保険の給付金があれば、治療費だけでなく生活費にも補填することができ、貯蓄をできるだけ減らさずに生活していくこともできます。
デメリット
がん保険のデメリットは、がんに特化した保障を受けられる反面、がん以外の病気やケガをしたときには適用範囲外となり保障が受けられません。
がん保険の多くは、契約期間が始まったときから起算して90日あるいは3カ月など一定期間、免責期間が定められています。
この免責期間中にがんと診断されても給付金は支払われません。
以上のがん保険のデメリットを承知することが大切です。がん保険に加入するかどうかは、自分の年齢や健康状態、家族構成、収入や貯蓄、医療保険の加入状況などを考慮して決める必要があります。
がん保険の選び方と留意点
がん保険の一般的な保障内容
がん診断給付金
がん診断給付金とは、がんと診断されたときに受け取れる給付金(一時金)のことです。
使い道は自由であるため、がんの治療費や生活費などに充てることができます。
保険会社によっては、上皮内新生物(早期のがん)にも対応しているものや、複数回受け取れるものもあります。
がん診断給付金の金額は、保険会社や商品によって異なりますが、50万円から100万円程度が一般的です。
金額が高いほど保険料も高くなりますので、自分の治療費や生活費の見積もりとバランスを考えて選ぶことが大切ですよね。
がん入院給付金
がん治療のため入院したときに、入院日数に応じて受け取ることができます。
医療保険のような入院日数や入院回数に制限はありません。使い道は自由であるため、治療費や生活費などさまざまな用途に使えます。
入院一日あたりの給付額は、保険会社やプランによって異なりますが、一般的には1万円から1万5千円程度です。
がん手術給付金
がん手術給付金とは、がんの治療を目的として一定の手術を行った場合に支払われる給付金です。
手術の回数は基本的に無制限ですが、一部のがん保険では、特定の手術において給付限度(60日に1回や14日に1回など)を設けている場合があります。
給付金の金額は、手術の種類や難易度に応じて決められた基準額に、保険会社やプランごとに設定された倍率をかけたものです。
例えば、基準額が1万円で倍率が20倍の場合、給付金は20万円になります。使い道は自由であるため、治療費や生活費などさまざまな用途に使えます。
がん通院給付金
がん通院給付金とは、がん治療のために通院した場合に支払われる給付金です。
医療保険のような1入院あたりの給付限度日数や通算給付日数の制限がないのが一般的で、長期入院や入退院を繰り返した場合でも安心ですよね。
通院給付金の金額は、保険会社やプランによって異なりますが、一般的には1日あたり5,000円や10,000円などが支払われます。
保険会社によっては、通院日数や期間に制限があったり、入院後の通院しか認められなかったりする場合もありますので確認が必要です。
先進医療給付金
先進医療給付金とは、がんの治療で先進医療を使用した時に受け取れる給付金です。
先進医療とは、厚生労働大臣が定める公的医療保険制度の対象外の新しい医療技術のことです。
先進医療の技術料は全額自己負担となりますが、先進医療給付金はその負担をカバーするために支払われます。
先進医療給付金の通算で受け取れる金額は保険会社やプランによって異なります。
一般的には、 1,000万円 、2,000万円 などの上限が設定されています。
がん保険の保障額を決定する場合の留意点
- がん保険の目的は、がんの治療にかかる費用や収入減に備えることです。そのため、自分の年収や家計の状況に応じて、必要な保障額を見積もることが大切です。
- がん保険の保障内容は、診断給付金、入院給付金、通院給付金、手術給付金、放射線治療給付金、抗がん剤治療・ホルモン剤治療給付金などがあります。
それぞれの給付金の金額や回数によって、保障額や保険料が変わります。自分が受ける可能性の高い治療法や費用を考慮して、適切な保障内容を選ぶことが必要です。 - がん保険には、掛け捨て型と貯蓄型があります。掛け捨て型は、保険料を払い続ける限り保障を受けられるタイプで、貯蓄型は、一定期間保険料を払った後に解約すると一部返戻金を受け取れるタイプです。
掛け捨て型は貯蓄型よりも保険料が安くなりますが、返戻金はありません。貯蓄型は掛け捨て型よりも保険料が高くなりますが、解約時に返戻金を受け取れます。
保険と貯蓄は別々に運用した方が、保障面・貯蓄面から考えても効率的ですよね。
掛け捨て型は、保障内容の見直しや乗り換えもしやすく、保険料を抑えてがんに備えたい人におすすめです。 - がん保険には、先進医療特約をつけられる商品もあります。先進医療特約は、公的医療保険の対象外で高額な先進的な医療技術にかかった費用をカバーしてくれる特約です。
先進医療特約をつけると、保険料は月に数百円程度高くなりますが、最新の治療法を受けられるメリットがあります。
先進医療の使用条件、自分のニーズや予算に合わせて、先進医療特約をつけるかどうか検討することが必要です。
以上のように、がん保険の保障額を決定する場合は、自分の状況や目的に応じて、様々なポイントを考慮する必要があります。
また、がんの治療法は日進月歩であることからも、できる限り見直しがしやすい内容で契約することが大切です。
がん保険に加入する際の注意すべきポイント
免責期間
がん保険の免責期間とは、がんと診断されても保障の対象とならない期間のこと。
一般的には、保険の申込み、告知、第1回保険料の支払いが完了してから90日間や3ヶ月間程度です。
この期間中にがんと診断された場合は、残念ながら給付金を受け取ることができません。
ガン保険の見直しをする場合も要注意です。見直しをして新たなガン保険に加入する場合は、新しいガン保険の免責期間が発生します。
そのため、旧契約をすぐに解約すると、新しいガン保険の免責期間中に保障の空白期間が生じてしまいます。
この空白期間中にガンと診断されてしまうと、給付金が受け取れないだけでなく、契約自体が無効になってしまうこともあり注意が必要です。
上皮内がんの保障の有無
がん保険の留意点として、上皮内がんの保障の有無は重要です。
上皮内がんとは、臓器の表面を覆う上皮内にとどまっているがんで、手術で取り除ける場合が多く、転移もほとんどしないと言われています。 しかし、発見が遅れると悪化する可能性もあります。
上皮内がんは、がん保険によって保障の対象になるかどうかが異なります。一般的には、以下の3つのタイプに分けられます。
- 上皮内がんも一般的ながんと同様に保障するタイプ
- 上皮内がんの保障額や回数を一般的ながんより制限するタイプ
- 上皮内がんをまったく保障しないタイプ
上皮内がんの保障額や回数を制限するタイプでは、例えば診断給付金が半額や1/10になったり、手術給付金が1回のみになったりする場合があるのです。
上皮内がんの保障の有無は、保険料にも影響します。 上皮内がんもしっかり保障するタイプは、その分保険料が高くなる可能性があります。
逆に、上皮内がんを保障しないタイプは、その分保険料が安くなるでしょう。
上皮内がんの保障をどれくらい必要とするかは、個人の判断となります。
しかし、上皮内がんは子宮頸部や大腸などで発見されることが多く、年齢や性別によって罹患リスクも異なってきます。
そのため、自分の状況やニーズに合わせて、上皮内がんの保障内容を確認することが大切です。
がん保険の診断給付金の支払い回数と条件
診断給付金はがんと診断された時に一時金として支払われるもので、がん保険の大きなメリットです。
しかし、商品によっては支払い回数が1度きりだったり、再発や転移した場合に支払われなかったりするものもあります。
以上のように、がん保険に加入する際は、自分のニーズやリスクに応じて、様々な要素を考慮する必要があります。
まとめ
「がん保険の基礎知識」、「60歳以降でがん保険は必要か?不要か?」、「がん治療とがん保険」、「がん保険の選び方と留意点」についてご理解いただけたと思います。
がん保険を考える場合は、まず、自分にがん保険が必要か、不要かを判断する。
がん保険が必要と判断した場合、選ぶときには次のポイントを押さえましょう!
- 公的保険のリスク許容度を超えている部分をがん保険で補填する。
- 高齢でのがん保険加入は保険料が高額となる。
- 加入している医療保険がある場合は、特約でがん保障をつけて対応するのも効果的です。
- 保障内容や金額、支払回数や条件を比較検討する。
- 免責期間や上皮内がんなどの注意点を確認する。
以上の点を考慮し、自分のニーズやリスクに応じて各種給付金の保障額を決定し、自分に最適な保険商品を選ぶことが大切です。
高齢になるとがんの罹患率が高くなります。がんになるとある程度まとまった医療費の準備が必要です。
がん保険に入らない方は突然発生する出費を考慮し、生活費と別の医療費専用の貯蓄を準備しておきましょう。
がん保険を準備される方は、自分のライフプランのリスクを補填できる、自分に最適な保険商品を選びましょう。
「備えあれば憂いなし」
あなたは、がんという難敵にも万全の備えで立ち向かえるはずです。
がん保険が必要な方、不要な方、ともにがんとのリスクに適切に向き合い、不安のないハッピーな老後を送りましょう!