- 60代以降に生命保険が必要か不要かわからない。
- 毎月の生命保険料の支払いが高額で負担になる。
- 60代以降は生命保険を見直した方がいいのだろうか?
生命保険は60代以降も必要でしょうか? 不要な方もいらっしゃるでしょう。
生命保険が必要であれば選び方や活用法は? 知りたいですよね!
私は55歳のときに老後の生活・お金に不安をいだきFPの勉強を開始。10年後の65歳でCFPと1級FP技能士を取得しました。
FP(ファイナンシャル・プランナー)がシニア世代のみなさんへ生命保険をどうすべきか? 問題解決のお手伝いをします。
この記事を読めば、「あなたに生命保険が必要か不要か、必要であればどのような生命保険がいいのか」がすべてわかります。
「こどもは独立した。扶養家族はいない。住宅ローンの返済は終わった。貯蓄は人並みにある」などの方は、生命保険は特に必要ありません。
ただし、「こどもをまだ扶養中、ローンが残っている。安定した収入がない。貯蓄が十分でない」などの方は、自分や家族のために生命保険を検討した方が良いでしょう。
老後の不安をなくし生命保険をどうすべきか?と、お考えの方は最後まで読んでください。
60歳以降、生命保険は必要か?不要か?
公的保険と生命保険の関係
日本には国民皆保険制度が導入されており、国民全員が共同して保険料を負担し、保険料を納めた全員に公的保険が保障されています。
公的保険には国や自治体が運営する社会保険や国民健康保険、介護保険などが存在します。
公的保険は高額の医療費や介護費を負担することで、国民の生活や健康を支えています。
一方、生命保険は保険会社が個人に対して、保険商品を提供し、個人が生命保険に加入することで、万が一のときに保険金を受け取れるシステムです。
生命保険は自分や家族の生活を守ったり、教育費、住宅ローンの返済などのためにも利用されます。
公的保険と生命保険はお互いに補完しあう関係。生命保険が必要な人は公的保険と生命保険を上手に組み合わせることで、高額となる自己負担を減らし、万が一のときにも安心して生活することができるでしょう。
生命保険が必要ではない人
- 扶養家族がいない。
- こどもが独立し、教育費は不要である。
- 住宅ローンは完済した。
- 住宅ローンは残っているが、団信(団体信用生命保険)に加入している。
- 自分が亡くなっても、家族は遺族年金で生活できる。
- 高齢で生命保険の保険料が高く、貯蓄した方が効率的だと思う。
- 資産は人並みにある。
などの方は、生命保険は必要ありません。
団信(団体信用生命保険)に加入していれば、住宅ローンを借りている人が死亡、または高度障害の状態になった場合、保険が適用され残りの住宅ローンの返済が免除され、家族はそのまま住宅に住み続けることが可能です。
厚生年金の受給者が死亡した場合、老齢厚生年金の年金額の3/4が遺族厚生年金として受給できます。
万が一の場合に残された家族が遺族厚生年金をいくら受給できるのか試算しておくのも将来設計で大切です。
2021年世帯年間払込保険料(全生保)(世帯主年齢別)
年 齢 | 年間払込保険料 |
60~64歳 | 38.4万円 |
65~69歳 | 43.6万円 |
70~74歳 | 33.7万円 |
75~79歳 | 31.4万円 |
80~84歳 | 28.6万円 |
85~89歳 | 35.8万円 |
生命保険の保険料を60歳〜89歳までの間払い続けた場合、トータルでいくらになると思いますか?
2021年生命保険文化センターの調査結果をもとに60~89歳までの世帯年間払込保険料を集計すると、平均で約1,000万円支払っている計算となります。すごいですよね!
約1,000万円も保険料で出ていくと思うと非常にもったいない感じがします。その分を貯蓄に回せたら、資産運用で大きな成果が出そうです。
以上、ここまで読んで生命保険が必要でないと判断された方は、運用の融通性がある貯蓄に回した方が賢明でしょう。
生命保険が必要な人
- こどもを扶養しており、教育費がまだ必要である。
- 住宅ローンが残っており、かつ団信(団体信用生命保険)に加入していない。
- 自分が亡くなった場合、残された家族は遺族年金だけでは生活できない。
- 貯蓄が不十分で自分に万が一のことがあった場合、残された家族は生活が厳しい。
- 生命保険を相続で活用したい。
以上に該当する方は、生命保険が必要です。
総務省「家計調査」の結果から残された配偶者が60歳から89歳まで生活する必要経費を試算。29年間の合計で約5,400万円が必要となる計算結果となりました。
15.5万円(1か月の必要額)×12か月×29年間=5,394万円(60歳~89歳までの総必要額)
生命保険(死亡保険)の理想とする必用補償額は、
家族が将来の生活で必要な生涯経費-(現在の貯蓄額+家族の将来の収入合計額)です。
適切に見積もって死亡保険の補償金額を設定しましょう。
現在の貯蓄額と自分が亡くなったあとの家族の収入(給与・年金・不動産・事業所得など)を試算してみましょう。
以上の内容を考えて生命保険が必要と思われた方は、自分に合った保険商品を探しましょう。
生命保険について勉強
生命保険の基礎知識
私たちの身の回りには様々なリスクが存在しますが、人の命や健康に関するリスクは大きく4つに分類されます。
死亡のリスク、長生きのリスク、入院のリスク、介護のリスクの4つです。このうち「死亡のリスク」と「長生きのリスク」を担うのが生命保険です。
生命保険とは、万が一のことが起こった人に対して保険金や給付金を支払う相互扶助の仕組みです。
生命保険商品には、保障機能と貯蓄機能があります。
保障機能では不測の事態が生じた場合に、少ない保険料でも多くの保険金や給付金が受け取れます。
貯蓄機能とは何事もなく無事に満期を迎えたり、途中で解約した場合に満期保険金や解約返戻金を受け取れることです。
保険料は純保険料と付加保険料から構成されています。
保険料とは保険契約者が払い込むお金のことで、純保険料とは将来の保険金の支払い財源となる部分です。
純保険料は死亡保険料(危険保険料)と生存保険料(貯蓄保険料)から構成されています。
死亡保険料(危険保険料)は死亡保険金の支払い財源となる部分で、生存保険料(貯蓄保険料)とは満期保険金の財源となる部分です。
付加保険料とは保険制度を維持・管理するための費用となります。
生命保険は「主契約」と「特約」の組み合わせからできています。
主契約は生命保険契約の基本となるものです。終身保険、定期保険、養老保険、医療保険、ガン保険、個人年金保険、介護保障保険など、特殊な商品を除けばほとんどの保険商品が主契約として販売されています。
特約は主契約に付加して利用する商品です。
主契約を死亡保障にして、特約で病気やケガに対する医療保障を利用したり、逆に医療保障を主契約にして、終身保険や定期保険などの死亡保障を特約として利用する場合もあります。
主契約はその保険商品を単独で契約することができますが、特約だけで単独の契約はできません。
生命保険は型により死亡保険、生存保険、生死混合保険の3つに分類されます。
死亡保険には定期保険、終身保険、定期付終身保険などがあり、生存保険には個人年金保険、貯蓄保険があり、生死混合保険には養老保険、定期付養老保険などがあります。
保険会社は不特定多数の保険契約者との間で契約を取り交わします。その基本となるお互いの権利義務を規定しているものを「生命保険約款」といいます。
保険会社は保険商品ごとに生命保険約款を作成し、監督官庁の許可を得ています。
約款のなかでも、「保険の特徴や仕組み、死亡保険金を支払わない場合」などの重要な部分を抜き出し、簡単に解説したものが「契約のしおり」です。
保険募集人は契約前に「契約のしおり」を契約者に手渡すことが義務づけられています。
生命保険のメリット・デメリット
生命保険のメリット
生命保険は突然の死や病気、ケガなどによって、家族の収入がなくなってしまった場合に保険金や給付金によって家族の生活を維持します。
保険の種類によっては、要介護状態になったときに一時金や年金形式で保険金を受け取れます。また、失業や休職で働けなくなったときに、生活費や医療費を支払うことができます。
養老保険は被保険者が生存したまま満期になれば、死亡保険金と同額の満期保険金が支払われる保険ですので貯蓄として活用可能です。
税制面では確定申告時に生命保険料控除を行うことにより、所得から一定額を差し引くことができ、節税ができます。
生命保険料控除とは、所得から生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を控除できる制度です。
生命保険と個人年金保険は平成24年1月1日から保険契約(新)と区分されています。
保険契約(新)は、新生命保険料:最高4万円、介護医療保険料:最高4万円、新個人年金保険料:最高4万円、生命保険料控除の適用限度額は合計で12万円です。
保険契約(旧)は、旧生命保険料:最高5万円、旧個人年金保険料:最高5万円、生命保険料控除の適用限度額は合計で10万円となっています。
確定申告では節税効果が大きいので、生命保険料控除の手続きを忘れないようにしましょう。
生命保険は相続税の減税効果があります。死亡保険金が非課税金額の範囲内であれば、死亡保険金に相続税はかかりません。
生命保険の非課税枠は、500万円×法定相続人の数です。
死亡保険金が非課税枠を超える場合でも、その他の相続財産と死亡保険金の非課税枠を超えた金額の合計が相続税の基礎控除額を超えなければ課税されません。
相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。
死亡保険金を受け取ったとき
交通事故や病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者および保険受取人が誰であるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になります。
死亡保険金の課税関係の表
被保険者 | 保険料の負担者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
A | B | B | 所得税 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | C | 贈与税 |
保険料の負担者と保険金受取人が同一人の場合には所得税が課税されます。この場合の死亡保険金の受取方法により、一時所得または雑所得として課税されます。
死亡保険金を一時金で取得した場合は一時所得、年金で受領した場合には公的年金等以外の雑所得となります。
被保険者と保険料の負担者が同一人の場合は相続税。被保険者、保険料の負担者および保険金受取人がすべて異なる場合には贈与税となります。
生命保険のデメリット
生命保険は毎月、保険料を払い続けなければなりません。高齢になると保険料がうなぎ上りとなり、保険料の負担で生活が苦しくなります。
養老保険や個人年金保険などの貯蓄性の高い保険は、将来的な物価上昇によっては、受け取る保険金の価値が相対的に下がることもあるでしょう。
生命保険は早期に解約すると、ほとんどの場合で解約返戻金が支払った保険料を下回ります。
特に契約日から経過した期間が短いほど、解約返戻金の返戻率が低くなるでしょう。
終身保険は保障が一生涯続くので、生命保険会社にとって被保険者が亡くなれば死亡保険金を必ず支払う義務が発生しますので、保険料は高額に設定されています。
終身保険は保障期間の途中で解約した場合、解約返戻金が支払われますが、この金額が貯蓄分ということです。
終身保険の場合、保障分と貯蓄分を併せて保険料として支払っているため、保険料は割高になります。
保険料を支払う方法に「終身払い」がありますが、生きている限り保険料を支払わなければなりません。
長生きするリスクにより、保険料を生涯通じて払い続けますので、保険料の支払い総額が莫大となります。
生命保険の留意点
定期保険は一定期間の保障をするもので、満期や更新ができなくなる年齢になると、その後の保障はなくなります。
生涯を通じてのリスクに備えるため、定期保険に加入の方は良いタイミングで終身保険へ切り替えた方が良いでしょう。
定期保険は掛け捨てタイプのものが多く、貯蓄性はほとんどありません。解約返戻金はあったとしても小額となります。
定期保険は貯蓄性がありませんので貯蓄を重視する方は、保険と貯蓄を切り分けて貯蓄だけでしっかりと運用した方が効果的です。
生命保険に加入するとき、現在の病気や過去の入院・手術などを調査する審査があります。病気になるリスクが高いと審査されたとき、保険に加入できない場合もあります。
既往症のある方でも加入できる「引受基準緩和型・限定告知型、無告知型・無選択型」などの保険も存在します。
引受基準緩和型・限定告知型は加入時の告知内容が少なく、持病や既往症などに対する治療も基本的に保障されています。
ただし、加入してから一定の期間は給付金が減額されることがあるので、約款で保障内容の確認をしましょう。
無告知型・無選択型は加入時の告知の必要はありませんが、保険金や給付金が低くなりやすく、保険料が高額になりがちです。
いろんな保険商品が準備されていますので、既往症があるからと諦めず、自分に合った保険を選びましょう。
独身で1人暮らしであれば死亡保険は必要なく、医療保険や介護保険を検討した方が良いですね。
定年退職後などでまとまった資金があるときは、一時払終身保険を利用すれば、支払う保険料は1回で済み、支払い方法の中で保険料の総額が1番安くなります。
一時払終身保険の保険料を一括で1回支払えば、生涯にわたり一定金額の保障が継続できます。
保障が一生涯続く保険であり、貯蓄性もある保険です。途中で解約しない限り、保障は一生涯続き、万が一のときには死亡保険金が受け取れます。
一時払終身保険を途中で解約した場合には、当初預け入れた金額に利息が付き、解約返戻金が払い戻されますので、貯蓄としても利用可能です。
まとめ
公的保険と生命保険の関係、生命保険が必要ではない人、生命保険が必要な人、生命保険の基礎知識、生命保険のメリット・デメリット、生命保険の留意点についてご理解いただけたと思います。
生命保険のポイントは、
- まず、自分に生命保険が必要か、不要か判断する。
- 生命保険が必要であれば、公的保険のリスク許容度を超えている部分を生命保険で補填する。
- 高齢になると保険料は高額となる。保障と保険料のバランスを考え、自分に合った保険商品を選ぶ。
- 自分が亡くなったあとの家族が必要な生涯費用を算定し、不足分を死亡保険金として設定する。
などです。
老後生活は限りある収入しかなく、保険料の出費は大きな負担となります。
できれば保険料の出費は押さえたいですが、生命保険が必要な方は、多くの保険商品の中から自分と家族のライフスタイルに合ったものを選んでください。
自分が亡くなったあと、残された家族が経済的に不安なく生活できるために準備が必要です。
自分が今まで築き上げた資産と生命保険という保障で、残された家族が安心して暮らせたら、どんなに幸せでしょうか。
家族への思いが自分の心も幸せにしてくれます。安心ある未来を設計し、不安のないハッピーな老後を送りましょう!